魍魎の匣(もうりょうのはこ)

原作読んですっげー面白かったんで、映画化されると聞いたときはめちゃくちゃ嬉しかった「魍魎の匣
やっと観にいくことが出来ました。
ネタバレアリで書くんで、見てない人のために反転。


原作を大胆にアレンジ(笑)


……いやいやいやいや。これはねーわ。
一言で言うとね、「いらんもの足しすぎ、必要な物抜きすぎ」
改 悪っていう騒ぎじゃないよこれ…。原作ファンが一番みたいものを見せずに映画作って、一体何がしたいの?


前半は結構よかった。時間軸が入れ替わってちょっと整理するのが大変だけど、3組に分かれた主人公がクロ スオーバーしてくとことかさ。
戦後の東京を再現したのは素直に凄いなーと思った。いや、あれ雰囲気出てるわ!あれ全部中 国ロケだったんね。もう日本じゃあこの時代の映画は撮れないのか…。

でも後半がいただけない。いただけないとか言うレベルじゃないくらい酷い。
劇中で、関口の小説は後半ガタガタに破綻していくと言われるけど、まさにこの映画がそれ。あ?もしかしてそれを狙ってあんな風にしたんですかー?(笑)


劇中小説「匣の中の少女」を入れないのはありえない。あれがあるからこそ、この作品を語るファンの口から必ず「ほう」という印象的なセリフが出てくるというのに、あれじゃあ全然「ほう」が何を意味するのかわかんない。
「ほう」は、「匣の中の少女」で出てきて、クライマックスで久保自身の口から言わせて、そしてラストシーンで関口の想像上の加菜子が言って、それで読み終えた読者が思わず「ほう」と言ってしまうのがいいんじゃないか。
それに時系列が原作と違ってるから、久保の動機も訳わからんし。
原作通りにして、ラストシーンのあの何ともいえない読後感を味合わせて欲しかったなぁ。


頼子が空気過ぎ。加菜子サイドから話が進むんで全然頼子のことが語られず、加菜子と頼子の関係とか、なんで加菜子を突き飛ばしたのか、とかが不鮮明。
ただ、加菜子と頼子の二人が邪 気眼全開でじゃれあってるシーンはよかった。加菜子の男言葉も良かったし。


しかし、謎部分の加菜子誘拐が丸々消えてるのはいただけない。てか加菜子が最初からあの状態で出てくるのはダメだろ〜。普通にベッドの上に寝てて、チューブとかにいっぱいつながれてるでいいじゃないか。なんであんな風に飾りつけて置いとくの?



それにしてもあの研究所はなんじゃい。もっと普通の病院みたいのじゃダメだったのか。最後の方の研究所に乗り込んであっちこっち行くのいらね。あの無駄な時間を謎解きとかの会話シーンに回してくれよ。
ラストの謎解きシーンですっきりしたいのに、そこで無駄なアクション入ってイライラする。もっとスカっと謎解きさせてくれよ。
ラストはドカーンバリバリーってどこのアクション映画だよ。邦画なんてものはもっと、じっとりしっとり落ち着いた雰囲気で、それでいてじわじわ来るような感じにしなきゃあ。


首だけ久 保竣公。これもひどいよなー。なんでいきなり首だけなんだよ。本人の望みどおり箱詰めにしてやれよ。
原作の久保は、匣入り娘ほしいなぁ→自作しちゃえ!→あれ?うまくいかないぞ?→え?匣に入れてくれるって?ヤッター!→ちょww苦しいww何これww→騙したなー!!→ガブー。…なのになぁ。
「少女を匣に詰めた男が最後に同じように匣に詰められる」と、「人体実験をした男がその相手に噛み殺される」というこの二人の「自 業自得」というか「因果応報」というかの死に方が、凄く良かったのになぁ…。
あんな風にされた久保の心情もわからんし。美馬坂なんか意味なく突然改心したっぽくなって研究所と一緒に死んじゃう?し。訳わからん。


榎木津活躍しすぎ。随分便利な目だなぁ。そんなに見えるんなら全部一人で解決しちゃえおよぅ!てーか今回は木 場が主役なんじゃないの?なのに木 場の出番少なすぎ。陽子との接点がほとんどなかったじゃん。むしろ榎木津のほうが陽子といた時間長かったよ。

京極 堂の勝 負服(黒尽くめ)も、なんか気がついたら着替えてて、全然勝 負服って感じがしないなぁ。
前作「姑獲 鳥の夏」の時は黒服に着替えた京極 堂が坂を下りるシーンが入ってて、いざ出陣!みたいな雰囲気で「これからクライマックスへと向かうんだな」というのが見てて伝わってきたけど。これじゃ全然わからんわ。
あれ?黒服になってるけど、勝 負服に着替えたんだよね?って一応手甲の確認までしたよ。


全体的に「お前ら美少 女のバラバラが見たいんだろ?」「ほーら、こういうグロイのが見たいんだろ?」というような変ないやらしさが見えてて嫌だ。
たしかに、「匣詰めの美少 女」「バラバ ラ殺人」「狂気の天才科 学者の人体実験」とかセンセーショナルな素材は揃ってるけど、この作品はそういったグロを楽しむ作品ではない。
この映画の監督はそういったインパクトのあるところをピッ クアップしただけで、全然作品の本質を見てないように思える。もっと原作を読み込んだ人に作ってもらいたかった。
ぶっちゃけ、私も原作を繰り返し繰り返し読みつくした訳ではないけれど、それでもこの監督よりは「魍 魎の匣」を理解しているはずだ。

前作「姑獲 鳥の夏」の方が出来が良かったよ。今回の監督よりも、前作の実相寺監督に作って貰いたかったなー。 …無理だけどね。


結論・駄作


原 作を知らない人がこれを見て、「こんなのが最高傑 作といわれるんなあ、京 極夏彦も大したこと無いなぁ」と思われるのは不本意だな。原 作はもっともっと面白いからね!!とにかく原 作を読んでくれ!!