ザ・マジックアワー

前から行きたいと思っていたので行ってきた。
レイトショーで行ったし、結構経ってるから人少ないかなーと思ったら結構人が居たな。
人多いの嫌いなんで、始まる前はDQNやら携帯のマナーモードも知らんババァにイラっとしたけど、始まったら静かなもんだったので安心した。
お客が多かったおかげで、みんなの笑い声とか聞こえて、コメディ映画を見るにはなかなか良い環境だったと思う。
ああ、それにしても期待を裏切らない面白さだった。三谷最高ー!!


ネタバレこみで書くので、ここから先は反転で。

三谷作品らしい小ネタが随所に散りばめられてて、ずっとニヤニヤしてました。
セメント埋めの時の地下室に、いきなりTHE有頂 天ホテルの超笑ってるシカのマークが入ったダンボールがあったりしてね。
有頂 天ホテルといえば、途中で出てきた路上ギター弾きは、有頂 天ホテルの憲二君(香 取慎吾)だったな。ギター、バンダナ、幸運(?)の人形の3つつけてたし、歌ってたのは「天国生まれ」だったし、ちゃんとエンドロ ールにも只野憲二のクレジットが載ってたのは芸が細かい。


いやーそれにしても、一応ギャング映画なのに人が誰も死なないってのは凄いなぁ。逆に、三谷作品だから大丈夫だろう、と安心して観れるよな。
なんつうか、キャラの温度差が面白いなぁ。観てる側としてはなんともいえないヒヤヒヤ感とか緊張感がある。本人気づいてないけど、本当は死と隣り合わせなんだよね。いつ死んでもおかしくないような状況で、気づいてないからこそあんな無茶する無謀っぷりが面白すぎる。

ギャングのボスがデラ富樫(の演技)気おされっぱなしで、いつも呆然としてるにもかかわらず、結構的確なツッコミを入れられるのも面白い。「私だけかな…?前にも似たような事があったの…」「え?またそこから始まるの?」とか。最後の方でも「父のように慕っていたのに!!」「え…そ、そうだったの…?」とかデラ富樫の前だと妙に弱々しいのが可愛いよな。
それ以外だとちゃんと威厳のあるボスだったのに、最後の方で一気に崩れちゃったりして、なんだかんだでこのボスが一番可愛かったなぁ。


あと、まぁなんといっても日本人特有の、主語を話さずに会話するというのをうまい事使ってて面白かったよな〜。
「なんでお前のいう事聞くんだ」「だってボクの舎弟みたいなもんですから〜」があった後に、「カット(あだ名だと思っている)」「ふざけるな!なんでお前がカットって言うんだ!いいか!カットって言っていいのはこの人(監督だと思っている)だけなんだぞ!!」って言っちゃう事によって、みんな本当にデラ富樫が備 後のいう事聞くもんだと思っちゃうしね。
あとは「手は打っておいた(スナイパーを配置しておいた)」の後に「で、どっから(カメラが)狙ってるんだ?この仕事(役者)長いから大体わかるよ〜」だもんだから本当に凄腕スナイパーと信じ込ませちゃうし。


この映画ってギャング映画だけど、映画の映画でもあるんだよな。裏方さんとか。無駄に力の入った劇 中劇とか。三 谷映画のお約束の、どうでもいい所に有名俳優仕込む所なんかはこの劇 中劇に説得力持たせてていいよなぁ。
この話って「守加護」とか架空の土地でありながら、「黒澤式」とか「世界の北野」とか映画に関する用語にだけは実在のものなんだよな。

ところで劇 中劇「暗黒街の用心棒」出てくる外国人だけど、パンフレットによるとフルネームが「ワンチャイ・バンダラビカル」なんだよねぇ。
ワンチャイ・バンダラビカルって、もしかして古 畑任三郎の「笑うカ ンガルー」に登場した数 学 者の名前じゃない?あの学者さんも東南 ア ジア系だったと思うけど、三谷の中で「東南 ア ジア系の男」といえば「ワンチャイ・バンダラビカル」なんだろうか?


そういや、「次 郎長三 国志の舞台の話が入ってるんだけど…」ってセリフあったけど、次 郎長三 国志って映画始まる前の予告でやってたよねぇ。
映画本編で無く、始まる前の予告すら伏線にしてネタ1つ作るとは斬新すぎるな。これDVDで観たら意味わかんないネタになっちゃうぞ。やはり「映画は映画館で観てね」という三谷の思いが込められてるんだろうか。


謎の殺 し屋デラ富樫だけど、本人は登場しないのかなと思ったら後姿で出てくるから、登場人物の誰かなんだろうかと考えてたんだけど、あの威圧感アリまくりで何でもこなせる敏腕っぷりのクラブのバ ーテンダーとかかなー、でも殺 し屋が男とも限らないからホテルの女主人かなーと思ったけど、あの後姿を見るとどれも違うし、誰なんだろーなーと思ってたら忘れたころに出てきてくれて、ちゃんと意表をつくキャラで良かった。
そういえば出かける前にホテルの女主人に「彼らは一体何をしようとしてるだ?」と聞いてたけど、今思えばあれは探り入れてたんだろうなぁ…。


ラストシーンは最高だったねー。最後に主人公の人徳によってスタッフが集まってくれたりとか。
想定してたのは違う終わり方になっちゃったけど、「こんな終わり方じゃ納得出来ないから役者続ける」って言って、スタッフには「撮影中止になる事なんてよくあるし平気だよ」って言ってたから、これで終わりかなーと思ったら、結局全部やっちゃうのが爽快だった。
本物と偽者、殺 し屋と役者なんて絶対的に不利な状況から、気合と演技で圧勝しちゃうのが凄い。普通に考えて、ライフル持った殺 し屋相手に、只の役者が指鉄砲で勝てるわけないんだけど、余りにも度の過ぎた嘘が本物を凌駕しちゃうんだよね。


基本的にこの映画の登場人物は主人公の演技に気おされてあっけに取られてるね。
ギャングとか殺 し屋とかでも、所詮は人間だから自分の中の常識のの範囲外の行動をとられると呆然としちゃうんだよね。
おかげでみんな妙に素直になってるんだよなぁ〜。そういうところのギャップがこの映画の面白いとこなんだよね。


三谷作品らしく、誰にでもお薦めできる映画です。ラストは爽快だし面白かった。